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賃貸物件で民泊はできる?始め方と契約前に確認すべき5つのこと

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「手持ちの資金は少ないが、民泊を始めてみたい」——そう考えたとき、最初に浮かぶのが賃貸物件を借りて運営する方法です。物件を購入する必要がないぶん初期投資を抑えられ、うまくいかなければ撤退もしやすい。参入方法としては合理的な選択です。
ただし、賃貸で民泊を始める難しさは「大家さんの許可を取ること」だけではありません。許可を得た物件でも届出が受理されないケースがあり、契約後に運営できないと判明して家賃だけが出ていく——という失敗は珍しくないのです。
さらに2026年に入り、民泊を取り巻く制度環境は大きく動きました。観光庁などが自治体に対して営業日数を実質ゼロにできる「ゼロ日規制」を容認する通知を出し、大阪市では特区民泊の新規受付が終了しています。数年前の情報をもとに計画を立てると、前提が崩れかねません。
本記事では、賃貸物件で民泊を始めるための手順を、契約前に確認すべき関門と2026年時点の最新ルールを軸に解説します。法令や制度に関する記述には、国および自治体の公式ページを出典として明記しました。

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賃貸物件で民泊は始められる?結論と成立の3条件


結論から言えば、賃貸物件でも民泊は始められます。実際、都市部で運営されている民泊の多くは、事業者が借りた物件を宿泊者に貸し出す形態です。
ただし、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると、その物件では民泊を運営できません。

  • 1、貸主(転貸物件なら転貸人も)の書面による承諾
  • 2、物件が法律上の「住宅」の要件を満たすこと
  • 3、建物・立地が消防法令と自治体条例をクリアすること
成立条件内容確認先
① 貸主の承諾賃貸人(転貸物件なら転貸人も)が、その物件で住宅宿泊事業を行うことを書面で承諾していること物件所有者・管理会社
② 物件が法律上の「住宅」に当たる設備要件と居住要件の両方を満たすこと。ここを見落とすと届出が通らない保健所などの届出窓口
③ 建物・立地が法令と条例をクリア消防法令に適合し、自治体条例の営業制限にも抵触しないこと消防署・自治体窓口

多くの解説記事は①だけを強調しますが、賃貸で民泊を始める人が実際につまずきやすいのは②の「住宅」該当性です。ここは後ほど詳しく扱います。

無断で始めた場合に何が起きるか

貸主の承諾を得ずに民泊を始めると、賃貸借契約上の無断転貸に当たります。契約解除や損害賠償を請求される可能性があるほか、貸主の承諾書は届出時の添付書類であるため、そもそも適法な届出ができません。
届出をせずに営業すれば、旅館業法上の無許可営業として扱われます。仲介サイト側も届出番号のない物件の掲載を認めていないため、集客の入口も塞がれます。「黙って始める」という選択肢は、実質的に存在しないと考えてください。
出典:観光庁「届出の際の添付書類|民泊制度ポータルサイト」/観光庁「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは|民泊制度ポータルサイト」

賃貸で見落とされる「住宅」要件という関門


住宅宿泊事業法にもとづく民泊(いわゆる新法民泊)は、あくまで住宅を活用する制度です。そのため届出できる物件は、法律上の「住宅」の定義を満たすものに限られます。
観光庁は、この住宅を設備要件と居住要件の2つで定義しています。

設備要件:4つの設備がその物件内にあること

届出する住宅には、次の4つの設備が備わっている必要があります。

  • 台所
  • 浴室
  • 便所
  • 洗面設備

これらは届出住宅そのものに設けられている必要があり、近隣の公衆浴場などで代替することはできません。一方で、設備が独立している必要はなく、ユニットバスのように1つの設備が複数の機能を兼ねる形でも認められます。
浴室は浴槽がなくシャワーのみでも足り、便所の和式・洋式も問われません。賃貸のワンルームであれば通常は問題になりませんが、シェアハウスの一室や風呂なし物件を検討する場合は事前に確認が必要です。

居住要件:3つのいずれかに当てはまること

こちらが賃貸民泊の関門です。届出する物件は、次の3つのいずれかに該当する家屋でなければなりません。

  1. 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
  2. 入居者の募集が行われている家屋
  3. 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

(1)生活の本拠は、現に特定の者の生活が継続して営まれている家屋を指します。短期的に使用するだけでは該当しません。自分が住んでいる賃貸の空き部屋を貸す「家主居住型」であれば、ここに当てはまります。
(3)随時居住は、生活の本拠ではないものの、所有者などが随時居住利用している家屋です。少なくとも年1回以上は使用している必要があり、観光庁は居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の物件はこれに該当しないと明示しています。別荘やセカンドハウス、転勤中の空き家などが具体例として挙げられています。
つまり、自分が住まない賃貸物件を民泊専用に借りる場合、(1)にも(3)にも当てはまりません。残る選択肢は(2)だけです。

(2)「入居者の募集が行われている家屋」とは何か

観光庁の定義では、これは住宅宿泊事業を行っている間、分譲または賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋を指します。ポイントは「事業を行っている間」という部分です。届出のときだけ募集をかければよい、というものではありません。
さらに注意すべきは、形式だけの募集は認められないという点です。観光庁は、広告において故意に不利な取引条件を事実に反して記載しているなど、入居者募集の意図がないことが明らかである場合は該当しないとしています。相場からかけ離れた家賃を掲げて実質的に募集する気がない状態は、要件を満たさないと判断されうるということです。
この場合、届出時には入居者募集の広告その他それを証する書類(募集広告の写し、賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写しなど)の添付が求められます。募集の実態については、都道府県知事等が必要に応じて報告徴収により確認することがあるとされています。
また、宿泊させている期間以外に他の事業の用に供されている物件は、住宅の対象から除外されます(人を宿泊させる事業・人を入居させる事業は除く)。民泊をしていない期間にレンタルスペースや撮影スタジオとして貸し出す運用は、この規定に抵触する可能性があります。
出典:観光庁「対象となる住宅|民泊制度ポータルサイト」/観光庁「届出の際の添付書類|民泊制度ポータルサイト」

「住宅」に当てはまらない場合の選択肢

居住要件をどうしても満たせない場合、住宅宿泊事業法での届出は難しくなります。その場合に検討することになるのが、旅館業法の簡易宿所営業です。こちらは「住宅」であることを前提としない制度のため居住要件はなく、営業日数の上限もありません。
ただし、用途地域の制限、建築基準法上の用途変更、より厳しい構造設備基準といったハードルが加わります。賃貸物件でこれらを満たすのは容易ではなく、貸主の協力も不可欠です。

賃貸で民泊を始める3つの法的ルートと選び方


日本で宿泊事業を営む法的枠組みは大きく3つあります。賃貸物件との相性という観点で整理すると次のとおりです。

比較項目住宅宿泊事業法(新法民泊)旅館業法(簡易宿所)特区民泊
手続き届出許可認定
年間営業日数180日が上限(条例でさらに短縮あり)上限なし上限なし
居住要件あり(設備要件+居住要件)なしなし
最低宿泊日数規定なし規定なし3日(2泊3日)〜10日の範囲で条例が下限を設定
用途地域の制限住居専用地域でも可能(条例による制限あり)ホテル・旅館を建てられる用途地域に限られる区域指定あり
実施エリア全国全国国家戦略特区の指定区域のみ
賃貸物件との相性◎ 最も現実的。ただし180日の壁がある△ 用途変更や設備投資のハードルが高い× 主要エリアで新規受付が終了

出典:観光庁「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは|民泊制度ポータルサイト」/観光庁「旅館業法について|民泊制度ポータルサイト」/観光庁「特区民泊について|民泊制度ポータルサイト」/内閣府地方創生推進事務局「旅館業法の特例(特区民泊)について」/内閣府地方創生推進事務局「国家戦略特別区域法施行令の一部を改正する政令(新旧対照条文)」
特区民泊の最低宿泊日数は、国家戦略特別区域法施行令で3日から10日までの範囲内と定められており、その範囲で各自治体の条例が下限を設定します。多くの自治体は最短の3日(2泊3日)を採用しているため「2泊3日以上」と説明されることが一般的ですが、条例次第でこれより長い下限が設定されている場合もあります。
賃貸で始める場合、実務上は住宅宿泊事業法での届出が第一候補になります。届出制のため手続きが比較的軽く、用途地域の制限も緩やかだからです。
一方で最大の制約が年間180日の上限です。年の半分は営業できないため、家賃という固定費を12か月分負担しながら180日で回収する構造になります。この点は収支計画の前提として押さえておく必要があります。

2026年、特区民泊は新規参入の選択肢から外れた

かつて「日数制限なしで運営できる」という理由で人気を集めたのが特区民泊です。全国の特区民泊の大半は大阪市に集中していました。
しかし大阪市は、ごみや騒音をめぐる近隣トラブルの増加を受けて新規受付の終了を決定し、新規申請および居室追加などの変更申請の受付は令和8年(2026年)5月29日をもって終了しています。すでに認定を受けている施設は従来どおり営業できますが、これから大阪市内で特区民泊を新たに始めることはできません。
この決定は、令和7年11月28日付で内閣総理大臣から関西圏国家戦略特別区域の区域計画変更の認定を受けたことで正式に決まったものです。あわせて大阪市は令和8年3月25日にガイドラインを改正し、苦情の発生を防止するために遵守すべき運営管理体制を追加しています。
制度が縮小に向かうと同時に、既存事業者への運営面の要求は高まっているという流れです。特区民泊を前提に書かれた古い記事は前提が変わっています。エリアと制度の組み合わせは、必ず自治体の最新ページで確認してください。
出典:大阪市「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)」/大阪市「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の新規受付終了について」

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契約前に必ず確認すべき5つの関門


賃貸民泊で最も避けたい失敗は、契約を済ませてから運営できないと判明することです。家賃の支払いが始まったあとで気づいても取り返しがつきません。
以下の5点は賃貸借契約を結ぶ前に確認してください。

  • 1、賃貸借契約書の転貸条項
  • 2、貸主の書面承諾
  • 3、マンション管理規約
  • 4、消防法令
  • 5、自治体条例

関門1|賃貸借契約書の転貸条項

宿泊者に部屋を使わせる行為は、契約上の転貸(又貸し)に当たります。一般的な賃貸借契約は無断転貸を禁止しているため、まず契約書の条項を確認します。
物件情報に「民泊可」と書かれていても、契約書の条項までは反映されていないことがあります。書面の文言を自分の目で確かめてください。

関門2|貸主の書面承諾(承諾書の書き方に要件がある)

届出の際は、賃借人であれば賃貸人が承諾したことを証する書類、転借人であれば賃貸人および転貸人が承諾したことを証する書類の添付が求められます。
ここで見落とされがちなのが、承諾書の中身の要件です。観光庁は、この書面には住宅宿泊事業を行うことが可能かどうかについて明記されている必要があるとしています。単に「転貸を認める」とだけ書かれた書面では足りず、住宅宿泊事業を行うことへの承諾であることが読み取れなければなりません。
賃貸借契約書にその旨が明記されていれば別途の書類は不要ですが、記載がない場合は承諾書を用意します。特定の書式は定められておらず、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」の転貸承諾書(例)などを参考に、適宜修正して活用することが案内されています。
口頭の了解だけで進めるのは避けてください。担当者が変わった、言った言わないという争いになったとき、書面がなければ立場を守れません。
出典:観光庁「届出の際の添付書類|民泊制度ポータルサイト」/国土交通省「『賃貸住宅標準契約書』について」/国土交通省「過去の契約書式例(転貸承諾書(例)等)」

関門3|マンション管理規約(区分所有建物の場合)

分譲マンションの一室を借りる場合、貸主の承諾だけでは足りません。区分所有建物では、届出時に管理規約の写しの添付が必要です。
確認は次の流れで進みます。

  1. 専有部分の用途に関する管理規約の写しを取得する
  2. 住宅宿泊事業を許容する旨の規定になっていれば、追加の書類は不要
  3. 規約に住宅宿泊事業についての定めがない場合は、届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書(様式C)、または法成立以降(平成29年6月以降)の総会・理事会の議事録などを添付する

規約で民泊が明確に禁止されていれば、その時点で選択肢から外れます。管理組合が民泊を禁止する方針を決議していないかどうかは、管理会社に問い合わせて確認しましょう。様式Cは観光庁の関係法令・様式集からダウンロードできます。
出典:観光庁「届出の際の添付書類|民泊制度ポータルサイト」/観光庁「住宅宿泊事業法(関係法令・様式集)」

関門4|消防法令(費用が跳ね上がる分岐点)

民泊を始めるには消防法令に適合している必要があり、多くの自治体では届出時に消防法令適合通知書の添付を求めています。ここは初期費用が大きく振れるポイントです。
消防庁の整理によれば、住宅を活用して民泊を営む場合、宿泊室の床面積や家主の居住の有無等の火災危険性に応じて消防法令上の用途が判定され、判定された用途によって必要な消防用設備等が変わります。

  • 家主が不在とならない場合(家主居住型)で、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下:一般住宅として扱われ、自動火災報知設備の設置が不要(住宅用火災警報器は必要)
  • 家主居住型でも宿泊室の床面積の合計が50㎡を超える場合:宿泊施設(消防法施行令別表第1の(5)項イ)扱いとなる
  • 家主不在型:宿泊室の床面積を問わず(5)項イとして扱われ、自動火災報知設備の設置が必要

ここでいう宿泊室の面積とは、民泊を営む住宅における「宿泊者の就寝の用に供する室」の床面積の合計を指します。
賃貸物件を借りて民泊専用に運営する場合、ほぼ家主不在型になるため(5)項イに該当します。ただし延べ面積300㎡未満であれば、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が可能とされており、無線式の連動型警報機能付感知器を用いる方式であれば配線工事が不要で、費用を抑えられます。延べ面積300㎡以上500㎡未満で民泊部分の合計が300㎡未満の場合にも、この設備を設置できるとされています。
賃貸マンションで検討している方が押さえておくべきなのが、共同住宅では「住戸」の用途をもとに「棟」全体の用途が決まるという点です。家主の居住/不在の判断は、一戸建てなら棟(建物)単位、共同住宅等なら住戸単位で行われます。
そのうえで、住戸の9割以上が(5)項イであれば棟全体が(5)項イ、9割未満であれば複合用途防火対象物((16)項イ)、すべての住戸が一般住宅扱いであれば共同住宅((5)項ロ)と判定されます。つまり一室の民泊が建物全体の用途判定に影響しうる構造になっており、貸主や管理組合が民泊に慎重になる理由もここにあります。
さらに、地階・無窓階・11階以上の階といった条件が加わると誘導灯やスプリンクラー設備の基準が変わり、費用が大きく膨らむことがあります。国の基準に適合していても、自治体の火災予防条例で上乗せが定められている場合もあります。
必要な設備と概算費用は物件ごとに変わります。図面を持って契約前に管轄の消防署へ事前相談してください。数十万円で済むのか、それとも数百万円かかるのか——この差は事業の成否を左右します。
出典:総務省消防庁「民泊における消防法令上の取り扱い等」/総務省消防庁「民泊における消防法令上の取扱い等に関するリーフレット(令和8年3月時点版)」

関門5|自治体条例(2026年に前提が変わった項目)

住宅宿泊事業法は年間180日を上限としていますが、自治体は条例でさらに厳しい制限を設けられます。住居専用地域では平日の営業を禁止する、といった上乗せ規制は各地で実施されてきました。
そして2026年7月15日、厚生労働省・国土交通省・観光庁の3課長連名で、都道府県・保健所設置市・特別区の主管部局長宛てに「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」が発出されました。従来のガイドライン(平成29年12月策定)ではゼロ日規制は「適切ではない」とされてきましたが、この通知はその方針を転換するものです。
通知で示された内容は次のとおりです。

  • 住宅地や教育施設等の周辺で、宿泊者の頻繁な往来により静穏な居住環境や清純な環境が損なわれるおそれがある場合、その区域で新たな住宅宿泊事業を実施することを禁止したり、営業可能日を土日祝前日等に制限したりすることが可能
  • 住宅地などで定住人口や地域コミュニティの維持が困難になるおそれがある場合にも、新たな住宅宿泊事業の実施を禁止できる
  • すでに多くの民泊が立地して現に静穏な居住環境が著しく損なわれているなど強い必要性が認められる場合には、一定の猶予期間を設けたうえで既存の届出住宅にも制限を設けうる
  • まちづくりの観点から、都市計画(特別用途地区など)により立地規制を行うことも可能

つまり180日はあくまで法律上の上限であり、実際に営業できる日数は条例次第でゼロにもなりうるということです。物件を探すエリアを決める段階で、その自治体が条例改正を検討していないかを確認しておく必要があります。各自治体の条例や窓口は、観光庁の民泊制度ポータルサイトからたどれます。
出典:観光庁「地方公共団体に対して民泊に関する通知を行いました(2026年7月15日)」/厚生労働省・国土交通省・観光庁「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」/観光庁「各自治体の情報・窓口|民泊制度ポータルサイト」

賃貸物件で民泊を始める6ステップ


確認事項を踏まえたうえで、実際の進め方を整理します。順番を守ることが、無駄な家賃を発生させないコツです。

  • 1、エリアと制度を決める
  • 2、物件探しと事前相談
  • 3、貸主の承諾取得と賃貸借契約
  • 4、消防設備の設置と適合通知書の取得
  • 5、民泊制度運営システムで届出
  • 6、運営体制の構築とOTA掲載

ステップ1|エリアと制度を決める

物件を探す前に、候補エリアの自治体条例を確認します。営業日数の上乗せ規制の有無、区域による制限、条例改正の動きの3点です。観光庁の民泊制度ポータルサイトから各自治体の条例や窓口をたどれるほか、自治体の担当課ページで最新の告知を確認できます。
あわせて、住宅宿泊事業法で進めるのか、旅館業法の簡易宿所を目指すのかを決めます。年間180日で採算が合うかどうかが判断軸になります。

ステップ2|物件探しと事前相談(契約前)

民泊利用が可能な賃貸物件は、一般的な検索サイトではほとんど見つかりません。転貸可の物件を扱う不動産会社に相談する、民泊物件を専門に扱う仲介業者を使うといった経路が現実的です。
候補が絞れたら、契約前に保健所などの届出窓口と消防署に事前相談します。持参するのは物件の住所や概要、間取り、面積がわかる資料です。この段階で「この物件では難しい」と分かれば、家賃を負担せずに撤退できます。

ステップ3|貸主の承諾取得と賃貸借契約

関門2で触れた要件を満たす承諾書を取得します。住宅宿泊事業を行うことへの承諾であると読み取れる文言になっているか、契約前に確認してください。区分所有建物であれば、管理規約と管理組合の状況もあわせて押さえます。

ステップ4|消防設備の設置と適合通知書の取得

事前相談で指示された設備を設置し、消防署の検査を受けて消防法令適合通知書を発行してもらいます。
受信機や中継器を伴う方式の工事には消防設備士の資格が必要ですが、消防庁の資料によれば、受信機や中継器を設置せず感知器のみで構成する特定小規模施設用自動火災報知設備であれば、工事に消防設備士の資格は不要で、着工前の届出も不要とされています。ただし設置工事完了後の届出は必要です。

ステップ5|民泊制度運営システムで届出

必要書類が揃ったら、観光庁の民泊制度運営システムから電子的に届出を行います。窓口への紙提出も可能ですが、電子届出のほうが効率的です。
届出に必要な主な添付書類は次のとおりです(個人の場合の例)。

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
  • 欠格事由に該当しないことを誓約する書面(様式B)
  • 住宅の登記事項証明書
  • 住宅の図面(各設備の位置、間取りと出入口、各階の別、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積、安全確保措置の内容)
  • 賃借人の場合は賃貸人が、転借人の場合は賃貸人および転貸人が承諾したことを証する書類
  • 区分所有建物の場合は管理規約の写し、定めがない場合は様式Cなど
  • 入居者募集の広告その他それを証する書類(居住要件の(2)に該当する場合)
  • 管理業務を委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し
  • 消防法令適合通知書(自治体の求めに応じて)

官公署が証明する書類は届出日前3か月以内に発行されたものである必要があり、写しは認められません。取得のタイミングにも気を配ってください。また、添付書類は日本語または英語で記載されたものに限られ、英語の場合は日本語訳の添付が必要です。
出典:観光庁「届出の際の添付書類|民泊制度ポータルサイト」/観光庁「民泊制度運営システムのご案内」

ステップ6|運営体制の構築とOTA掲載

届出番号が交付されたら、家具家電の設置、清掃体制の確保、チェックイン方法の整備を進め、AirbnbやBooking.comなどの仲介サイトに掲載します。掲載時には届出番号の記載が求められます。
賃貸民泊では運営者が現地に住んでいないケースがほとんどです。チェックイン対応や鍵の受け渡しをどう回すかは、掲載前に固めておく必要があります。

家主不在型は住宅宿泊管理業者への委託が原則義務


賃貸物件を借りて民泊を運営する場合、避けて通れないのが管理業務の委託義務です。次のいずれかに該当すると、住宅宿泊管理業務を登録済みの住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。

  1. 届出住宅の居室の数が5を超える場合
  2. 届出住宅に人を宿泊させる間、不在となる場合

自分が住まない賃貸物件で運営する以上、通常は2番目に該当します。ここでいう「不在」の判定は厳密で、日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除かれるものの、観光庁は一時的な不在として認められる時間は原則1時間、事情により2時間程度までとしています。業務等により継続的に長時間不在とする場合は、一時的な不在には該当しません。
委託する場合は、業務の全部を一の住宅宿泊管理業者に委託する必要があります。複数の者への分割委託や、業務の一部を自ら行うことは認められていません(受託した管理業者が一部を再委託することは可能です)。

委託が不要になる例外

次の条件をいずれも満たす場合は、不在であっても委託が不要とされています。

  • 住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が、同一の建築物もしくは敷地内にあるか、隣接していること
  • 自ら住宅宿泊管理業務を行う届出住宅の居室数の合計が5以下であること

ただし敷地が広範で住戸間の距離が著しく離れているなど、届出住宅で発生する騒音等を認識できないことが明らかな場合は、この例外に当たりません。自宅の隣の部屋を借りて運営するといったケースを除けば、賃貸民泊では委託が前提になると考えておくべきです。
委託費用は運営代行会社によって異なりますが、売上に対する料率で設定されることが一般的です。家賃と並ぶ固定的なコストとして、収支計画に必ず織り込んでください。
出典:観光庁「管理業務の委託について|民泊制度ポータルサイト」

賃貸ならではのコスト構造をどう見るか


持ち家での民泊と賃貸民泊の決定的な違いは、営業していない期間も家賃が発生するという点にあります。年間180日が上限である以上、12か月分の家賃を180日以内の稼働で回収する構造になります。
収支を検討する際は、少なくとも次の項目を分けて把握してください。

区分主な項目
初期費用敷金・礼金・仲介手数料、消防設備工事、家具家電、寝具・アメニティ、スマートロックやチェックイン設備、撮影費、行政書士への依頼費用
固定費(毎月)家賃、共益費、水道光熱費、通信費、管理業者への委託料、各種システム利用料
変動費清掃費、リネン費、消耗品費、OTAの手数料、宿泊税(該当自治体)

消防設備の費用は物件によって大きく変わるため、事前相談の結果が出るまで初期費用は確定しません。逆に言えば、事前相談を飛ばして契約すると、最も振れ幅の大きい費用を見積もれないまま走り出すことになります。
立地についても、家賃と宿泊需要のバランスを見る必要があります。家賃の安い物件は宿泊需要も乏しいことが多く、一方で相場より高い家賃で借りれば、その差額を稼働で埋めなければなりません。近隣の類似物件が実際に予約で埋まっているかを、仲介サイトのカレンダーで確認する方法が実務的です。

2026年の規制強化に備える|ICT管理を前提にした運営体制へ


先ほど触れた2026年7月15日の通知には、賃貸民泊の運営体制に直結する内容がもう一つ含まれています。ICTを用いた管理の義務付けです。
住宅宿泊事業法第10条は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情および問合せに適切かつ迅速に対応することを事業者等に求めています。通知はこれを踏まえ、建物が密集している都市部をはじめとして、地域の実情や届出住宅の利用状況などに応じ、自治体が条例により次のような措置を義務付けうるとしました。

  • 騒音計や出入口におけるカメラの設置
  • それらによるモニタリングの実施
  • 一定期間(過去1年間分など)のデータ保存

あわせて通知は、法第18条の規定にかかわらず、チェックイン・チェックアウト時間の制限や施設の定員数の上限設定なども、地域の実情に応じて合理的な範囲で条例により定めうるとしています。無人運営を前提にしている施設ほど、この方向の規制の影響を受けやすくなります。
出典:観光庁「地方公共団体に対して民泊に関する通知を行いました(2026年7月15日)」/厚生労働省・国土交通省・観光庁「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」

賃貸・転貸スキームで見落とせないリスク

通知にはもう一点、賃貸で民泊を運営する人が押さえておくべき記述があります。新たな住宅宿泊事業の実施が禁止された区域では、住宅宿泊事業者(届出者)の変更が生じた場合、法第3条にもとづく届出を新たに行う必要があることから、その届出住宅で住宅宿泊事業を引き続き実施することはできないという点です。
賃貸物件を法人名義から個人名義に切り替える、運営を別の事業者に引き継ぐ、物件を譲渡する——こうした変更が、禁止区域では事業の終了を意味しかねません。複数物件を運営する計画がある場合や、将来的な譲渡を視野に入れている場合は、この点を織り込んでおく必要があります。
出典:厚生労働省・国土交通省・観光庁「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」

求められるのは記録が残る運営

規制の方向性を整理すると、行政が求めているのは何が起きたかを事後に検証できる運営です。誰が、いつ、どのように入室したかが記録として残り、苦情が発生したときに迅速に確認できる体制。これが条例で明文化されつつあります。
鍵をキーボックスに入れて暗証番号を伝えるだけの運営では、宿泊者以外の人物が入室しても記録が残りません。本人確認の記録も、宿泊者名簿も、紙やメッセージのやりとりに散らばったままでは、行政からの照会に即応できないでしょう。
セルフチェックインシステムは、この課題に対する現実的な解になります。

  • 本人確認:AIによるパスポートの自動読み取りと本人認証で、対面に準ずる確認を無人で行える
  • 宿泊者名簿:台帳とパスポートデータをクラウド上に保管でき、保管場所を確保せず遠隔から管理できる
  • 鍵の受け渡し:スマートロックと連携し、チェックイン完了後に暗証番号を発行する運用にできる
  • 予約情報の連携:サイトコントローラーと連携して予約情報を自動取得し、転記の手間とミスを減らせる
  • 多言語対応:日本語・英語・繁体中国語・簡体中国語・韓国語に対応し、インバウンドの宿泊者にも対応できる

賃貸民泊は運営者が現地にいないことが前提です。だからこそ、チェックインから鍵の受け渡しまでの一連の流れを、記録が残る形で自動化しておく価値は大きいと言えます。法令対応であると同時に、深夜到着への対応や待ち時間の解消といったゲスト体験の改善にもつながります。

セルフチェックインシステムは「maneKEY」


賃貸物件での民泊運営では、運営者が現地に常駐しないことが前提になります。そのため、チェックイン対応と鍵の受け渡しをどう仕組み化するかが運営の要になります。
セルフチェックインシステム「maneKEY」は、日本全国のホテル・民泊において導入施設数150施設以上の実績があるセルフチェックインシステムです。
パスポート読み取り機能や宿泊者の顔写真撮影、AIによる本人認証など法律に則ったチェックインフローが揃っています。
宿泊台帳はクラウド管理されており、必要な時に必要な情報をエクスポートすることもできます。ICT管理を条例で義務付ける動きが出てきている今、記録が残る運営体制はそのまま法令対応の土台になります。
またスマートロック連携を行うことで鍵の受け渡しも不要になり、スタッフの業務負担を軽減。日本語、英語、韓国語、中国語が利用でき、インバウンド需要にも対応しています。
必要な機能をシンプルに備えた使いやすいサービスで価格を抑えて提供し、人手不足の解消に加え、経費の削減にも貢献します。
賃貸物件での民泊運営をご検討なら、ぜひ「maneKEY」をご検討ください。

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賃貸民泊に関するよくある質問

物件情報に「民泊可」とあれば届出は通りますか?

通るとは限りません。「民泊可」は貸主が民泊利用を認めているという意味にすぎず、管理規約による禁止、消防設備の不足、自治体条例による制限、居住要件を満たせないといった理由で届出できないことがあります。契約前に保健所と消防署へ事前相談してください。

貸主の承諾は口頭でも問題ありませんか?

届出の添付書類として承諾を証する書類が必要になるため、書面が必須です。しかも、住宅宿泊事業を行うことが可能かどうかが明記されている必要があります。単に転貸を認める旨だけの書面では要件を満たしません。

自分が住んでいる賃貸の空き部屋を貸す形でも届出は必要ですか?

必要です。家主居住型であっても住宅宿泊事業に当たるため届出が求められます。ただし居住要件は「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」として満たしやすく、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下であれば一般住宅として扱われ、消防設備の負担が軽くなります。貸主の承諾が必要な点は変わりません。

サブリース会社が転貸している物件の場合はどうなりますか?

自分が転借人という立場になるため、賃貸人と転貸人の双方が承諾したことを証する書類を得る必要があります。承諾の当事者が増えるぶん、調整に時間がかかると見込んでおいてください。

契約後に民泊できないと判明したら、どうなりますか?

原則として賃貸借契約は有効に成立しているため、家賃の支払い義務は残ります。中途解約には違約金が発生することも多く、負担は小さくありません。だからこそ、事前相談と承諾書の取得を契約前に済ませる順番が重要になります。

年間180日を超えて営業したい場合はどうすればよいですか?

住宅宿泊事業法の枠内では超えられません。旅館業法の簡易宿所営業の許可を目指すことになりますが、用途地域の制限や建築基準法上の用途変更、構造設備基準への適合が必要です。賃貸物件では貸主の協力と相応の投資が前提となるため、物件選びの段階から旅館業を想定して進める必要があります。

まとめ

賃貸物件で民泊を始めることは可能です。ただし成立させるには、貸主の書面承諾、法律上の「住宅」要件、消防法令と自治体条例という3つの条件をすべてクリアする必要があります。
特に、自分が住まない物件を借りて運営する場合の居住要件は、多くの解説で省かれがちでありながら届出の可否を左右する論点です。「入居者の募集が行われている家屋」に該当させるための運用まで含めて、事前に窓口で確認しておいてください。
そして2026年、制度環境は明確に厳格化の方向へ動いています。ゼロ日規制を容認する通知、ICT管理の条例による義務付け、大阪市における特区民泊の新規受付終了。いずれも数年前の情報では捉えられない変化です。
こうした流れのなかで求められるのは、記録が残り、遠隔でも即応できる運営体制です。チェックイン・本人確認・宿泊者名簿・鍵の受け渡しを一連の仕組みとして整えておくことは、法令対応とゲスト満足度の両面で効いてきます。物件探しと並行して、運営体制の設計にも着手しておきましょう。

参考・出典一覧

本記事の法令・制度・条例に関する記述は、以下の国および自治体の公式資料にもとづいています。

観光庁・国土交通省

総務省消防庁

内閣府

自治体

※本記事は2026年10月時点で公開されている情報にもとづいて作成しています。住宅宿泊事業法・旅館業法および各自治体の条例は改正されることがあります。実際の手続きにあたっては、必ず物件所在地を管轄する自治体の窓口および最新の公式情報をご確認ください。