旅行に関する規制が緩和され、観光客が増えてきました。使っていない部屋や物件がある方の中には、民泊として利用して収入源にしたいと考える方も増えています。しかし、民泊の始め方や法律など、分からないことも多いでしょう。そこでこの記事では、民泊の始め方と民泊に関する法律の基礎を解説します。民泊を始めたい方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
民泊経営を始めるには何が必要?
民泊経営を始めるためには、大まかに以下が必要です。
- 物件の選定・取得
- 許可申請や届出に必要な書類の作成
- 許可申請・届出
- 物件のリノベーション
- 必要設備やアメニティなどの準備
- 料金設定や規約の作成
- 民泊サイトへの登録
- Webサイトや公式SNSの整備
民泊の始め方
宿泊施設の運営は「旅館業法」で定められており、民泊も宿泊施設に該当します。そのため、許可を得ずに物件を民泊として貸し出し、宿泊料金を取ることは違法です。民泊を始めるためには、事前に申請して許可を得て運営しましょう。民泊を始めるためには、以下のような手順を踏みましょう。
- 許可申請・届出の提出
- リノベーション・必要設備の準備
- 料金設定や規約の作成
- 民泊サイトへの登録
- 運営開始
1.許可申請・届出の提出
民泊には、旅館業として実施する「旅館業民泊」と、特定の自治体で許可を受けて運営する「特別民泊」、届出を出せば始められる「新法民泊」の3種類があり、それぞれ許可申請や届出の方法が変わります。特別民泊は自治体ごとに運営できる地域が決まっており、2泊3日以上の利用に限定されています。そのため、少しイレギュラーな形態です。ここでは「旅館業民泊」と「新法民泊」について説明します。
旅館業民泊に必要な申請
旅館業民泊は、ホテルや旅館などと同じような形態で運営できる民泊です。年間の営業可能日数に制限がない分、自治体の許可を取る必要があり、運営ハードルが高いです。
旅館業民泊を始めるためには、民泊登録要件を満たしているかを「建築指導課」「開発審査課」で行い、その後保健所への申請が必要です。申請時には以下のような書類が必要になります。
- 登記事項証明書
- 状況見取り図
- 配置図・平面図
- 構造設備の仕様図
- 仕様承諾書
- 水質検査成績書
- 土地・建物登記簿謄本
- 検査済証
新法民泊に必要な申請
新法民泊の基礎となる民泊新法では、「人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が1年間で180日を超えないものをいう」という180日ルールが制定されています。つまり、新法民泊の場合は年間で民泊として営業できる日数は180日までと決まっているのです。
新法民泊はこのように制限がありますが、届出をして許可が降りればすぐに運営できます。
届出は、ポータルサイトと保健所のどちらでも行うことができます。届出にあたって、以下のような書類が必要です。
- 商号、名称または氏名及び住所
- 役員の氏名(法人の場合)
- 法定代理人の氏名・住所(未成年者の場合)
- 住宅の所在地
- 住宅宿泊管理業者の商号など(管理業者に委託する場合)
- 住宅図面
- 誓約書
届出書は、ポータルサイトからダウンロード可能です。
2.リノベーション・必要設備の準備
民泊として集客するためには、ゲストに快適に利用してもらえるようリノベーションをしたり、お風呂やキッチンなどの必要な設備を準備する必要があります。お風呂とトイレを別にしたり、トイレを洋式の綺麗なものにしたりと、ゲストが泊まりたくなるようなリノベーションを行いましょう。
また、民泊サイトには写真も掲載します。写真で宿泊施設を決める人も多いので、写真を撮った時に魅力的に見えるよう、インテリアも工夫しましょう。
3.料金設定や規約の作成
民泊として貸し出せる状態になったら、料金設定や利用規約など、実際にゲストを迎え入れる準備をしましょう。料金設定は、閑散期は安く、長期休みや土日祝日などの繁忙期は高くすることが一般的です。また、連泊割を用意すればより長い間利用してもらえます。
規約も重要です。チェックイン・チェックアウト時刻の設定や禁止事項、クリーニングの有無などを決定します。特に禁止事項については、近所の迷惑にならないよう設定することが大切です。
4.民泊サイトへの登録
ゲストを集めるために、Airbnbのような民泊サイトに登録しましょう。民泊サイトには写真を掲載するので、外観や内観が魅力的に伝わるような写真を準備することが大切です。
新法民泊経営で理解しておきたい民泊新法とは
民泊新法(住宅宿泊事業法)は、平成29年6月に成立した民泊に関する法律です。民泊を運営するうえで重要な安全面・衛生面の確保やトラブルの防止、多様化する宿泊ニーズへの対応など、民泊サービスを最適化し健全に運用するために制定されました。
民泊新法では、民泊のホストである「住宅宿泊事業者」、事業者から依頼されて実際に民泊事業を運営する「住宅宿泊管理業者」そして、宿泊者と事業者をマッチングさせる「住宅宿泊仲介業者」の3種類が対象となります。
民泊新法における3つの重要ポイント
新法民泊を運営する際は、その基礎となっている民泊新法について重要ポイントを理解することが大切です。ここでは、民泊新法の中でも、民泊事業を運営するうえで特に押さえておきたい重要ポイントを3つ紹介します。
民泊を行うための要件を満たしている住宅が対象
住宅宿泊事業法では、民泊として貸し出せる住宅に要件を設けており、要件を満たしていない住宅を貸し出すことは違法行為にあたります。
住宅事業法第2条1項で、住宅の定義として2つが挙げられています。
一 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること
出典:e-Gov法令検索「平成二十九年法律第六十五号 住宅宿泊事業法」
つまり、対象となる住宅は、「設備要件」と「居住要件」を満たしている必要があります。
設備要件
設備要件として、「台所」・「浴室」・「便所」・「洗面設備」の4つが設けられていることが定められています。これらは生活をするために必要な設備とされ、例えば台所や浴室がないスペースを民泊施設として貸し出すことはできない、ということになります。
居住要件
居住要件としては、3つが挙げられています。
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋であること
- 入居者の募集が行われている家屋であること
- 随時所有者等の居住の用に供されている家屋であること
これらの3つの条件に当てはまれば、一戸建てやマンションなどの共同住宅に問わず、民泊施設として届出を行うことが可能です。
180日ルールの制定
民泊新法では、「人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が1年間で180日を超えないものをいう」という180日ルールが制定されています。つまり、年間で民泊として営業できる日数は180日までと決まっているのです。
180日ルール制定の背景には、営業日数が180日を超えると住宅としてみなすことが難しくなる、ホテルや旅館の営業に影響を与える、などの理由があります。180日を超えて営業したい場合は、旅館業として許可を取得し、開業する必要があります。
また、民泊新法以外で各自治体がこの営業可能日数をさらに制限しているケースもあります。詳しくは、ご自身が営業しようとしている地域の地方自治体に問い合わせて確認してみてください。
住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置を義務付け
衛生の確保、周辺環境への悪影響の防止等の観点から、宿泊者名簿の備付けや苦情等への対応など、様々な義務が住宅宿泊事業者に課されています。また、住宅宿泊事業法第42条によると、法令違反となる行為をした場合、業務停止命令や登録の取消、罰則などの処分が課されることもあります。
民泊経営に失敗しないための3つのポイント
ここでは、民泊を始める際に注意したい3つのポイントについて解説します。
- エリア選定に時間をかける
- 初期費用に加えて数ヶ月分の運転資金も用意する
- 投資回収期間を多めに見積もる
エリア選定に時間をかける
民泊を開業して集客に成功するためには、エリア選定が重要です。
まずは、民泊を自由に開業・運営できるエリアを選びましょう。地域によっては、条例によって民泊を営業できる日に制限があるなど、民泊運営が厳しく規制されていることがあります。
さらに、宿泊客にとって訪れやすい立地であることもポイントです。最寄駅から離れすぎており、車でないといけないエリアや、近くにコンビニやスーパーがないところは、集客に苦労する可能性があります。
民泊を利用する層は、高級ホテルのようなホスピタリティを期待しているとは限りません。むしろ、「ホテルより安く宿泊できる施設」として、旅行時に便利なエリアにあることを期待している方が多いでしょう。ターゲットのニーズを理解して、適切なエリアを見極めましょう。
初期費用に加えて数ヶ月分の運転資金も用意する
民泊に限らず、経営者として重要なのは資金繰りです。
民泊運営では、場所の確保やリノベーションなどで多額の初期費用が発生します。さらに、水道光熱費や通信費など、ランニングコストもかかります。
民泊を開業してすぐに集客できるとは限りません。はじめは利益が出ず、赤字になってしまう可能性も十分にあります。軌道に乗るまで耐えられるよう、初期費用に加えて、数ヶ月分の運転資金も確保しておきましょう。
投資回収期間を多めに見積もる
民泊経営のためには、住宅の購入費用やリノベーション費用など、多くの初期費用がかかります。初期投資を回収できるまで数年かかることも少なくありません。投資回収期間を甘く見積もってしまうと、途中で資金がショートしてしまう可能性があります。投資回収期間は多めに見積もり、資金繰りに失敗してしまうリスクを防ぎましょう。
民泊経営に成功するためのポイント
ここでは、民泊経営を成功させるために重視したいポイントを2つ紹介します。
- ターゲットを明確にする
- IT化を進めて人件費を削減する
ターゲットを明確にする
まずは、ターゲットを明確にしましょう。
民泊の利用者には、「ホテルよりも安く宿泊したい観光客」「大人数で同じ部屋に泊まりたい人」「ほかの宿泊者との交流を楽しみたい人」「外国人観光客」などが挙げられます。ターゲットによって、料金設定や必要な設備、アメニティなどは異なります。
たとえば、大人数で同じ部屋に泊まりたい層をターゲットにする場合は、部屋にプロジェクターやゲーム機、ボードゲームなどを用意すると、魅力的な民泊になります。また、ほかの宿泊者との交流を楽しみたい人をターゲットにする場合は、共有スペースにダイニングテーブルやソファなどを用意して、交流できる環境を整えることがおすすめです。外国人観光客にアプローチしたい場合は、日本らしい体験ができるプランを用意すると喜ばれるでしょう。
ターゲットに合わせた民泊づくりは、競合との差別化にもつながります。
IT化を進めて人件費を削減する
民泊経営では投資回収が課題の1つです。売上を上げるだけではなく、利益率を高めることにも注力しましょう。民泊経営を効率化するためには、IT化を進めることが大切です。
たとえば、チェックイン手続きを自動で行えるシステムを導入すれば、フロントに常時スタッフを配置する必要がなくなります。また、鍵をシステム上で受け渡しできるシステムを使えば、チェックインやチェックアウト時をスムーズに行えるようになります。
IT化を進めて無人化を実現し、人件費を削減しましょう。
民泊経営に成功したい方や成功事例を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
賃貸物件での民泊の始め方
賃貸物件で民泊を始めたい場合は、まずはマンションの管理組合や大家さんなどに確認しましょう。特に、マンションで民泊を始める場合は、マンションの管理組合が民泊経営を許可していることを示す承諾書を提出する必要があります。民泊許可物件であることを確認したうえで、申請を行いましょう。
また、物件が民泊運営に必要な要件を満たしているかも忘れずにチェックしてください。
民泊運営を始めたら確定申告はどうする?
民泊オーナーは経営者です。そのため、確定申告について理解しておく必要があります。民泊を本業として運営するか、副業として運営するかによって異なりますが、基本的には一定の利益が出たら確定申告が必要になると考えておきましょう。
以下では、確定申告が必要なケースと、経費にできる費用の例について解説します。
確定申告が必要なケース
個人事業主として民泊を運営する場合、1月1日から12月31日までの1年間の所得が48万円以上であれば、確定申告が必要です。
この所得は民泊事業だけではありません。民泊運営の他にも別の仕事を個人事業主として請け負っている場合は、合計所得が48万円以上であれば、確定申告をしなければなりません。
本業で会社に所属しており、副業として民泊を運営している方は、副業での所得が年間20万円を超える場合は原則確定申告が必要です。こちらも、複数の副業を行っている場合は合算である点に注意しましょう。
経費にできる費用の例
民泊運営では、民泊運営に必要な費用を経費に計上できます。具体的には、以下のような費用の全額、または一部を計上可能です。
- 家賃
- 固定資産税
- 水道光熱費
- 減価償却費
- 水道光熱費
- 通信費
- 掃除道具
- アメニティにかかる費
- 損害保険料
- 借入利息
自宅の一部を民泊とする場合は、家事按分が必要です。家事按分とは、事業用とプライベート用を分けて経費計上することを指します。たとえば、家賃20万円の自宅で民泊を開業しており、1ヶ月のうち9日間を民泊として貸し出しているとします。この場合、事業用に使用しているのは約3割であるため、家賃の3割を経費として計上できる、という仕組みです。
家事按分の割合は自身で設定できますが、経費計上の根拠を客観的に説明できるよう、民泊運営で使用している分のみを経費にすることが必要です。
正しい手順を理解して、民泊を適正に運営しよう
今回は、民泊を始めたい方に対して、民泊の始め方や関係する法律の重要ポイントについて解説しました。特に新法民泊は、届出だけで運営できるため運営ハードルが低い民泊です。しかし、その分民泊新法によって要件やルールが厳しく定められています。民泊を安全かつ適正に運営するためには、民泊の始め方と民泊新法について把握することが大切です。
民泊新法については、国土交通省が運営する民泊ポータルサイトで詳しく解説されています。こちらも併せてご覧ください。
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