金融機関から融資を受ける際は、ある程度の自己資金を用意する必要があります。そもそも、どのようなお金が自己資金と認められるのでしょうか。また、自己資金なしで融資を受けることは可能なのでしょうか。この記事では、融資を受ける際の自己資金について、自己資金として認められるお金の種類や自己資金に関する注意点、自己資金なしで融資を受ける方法などを解説します。
融資を受ける際の自己資金とは
起業する際、多くの方が金融機関から融資を受けて創業資金に充てるでしょう。
融資を受ける際は、ある程度の自己資金を用意しておく必要があります。融資を受ける際の自己資金とは、自分の手元にあるお金のことです。
実際、多くの融資制度では、融資を受ける要件として「創業資金の◯割の自己資金が必要」と定めています。
融資を受ける際に自己資金が必要な理由
自己資金が求められるのは、返済能力の有無や起業の計画性を判断するためです。
融資は補助金や助成金ではなく、基本的には数年後に返済することが求められます。十分な自己資金があれば、その起業が前もって準備されたものであり、期日までに返済される見込みがあると判断できるでしょう。
自己資金として認められるお金
自己資金として認められるお金は、出所が確認できるものです。例えば、以下のようなお金は自己資金として認められます。
- 自分名義の預貯金
- 退職金
- 配偶者名義の通帳にある預金(配偶者が同意している場合)
- 資産を売却して得た資金
- 相続したお金
- 生命保険の解約返戻金
- 第三者割当増資
ただし、融資を受ける直前に口座に大量のお金を振り込んだ場合は、自己資金として認められない可能性があります。誰かから借りたお金を、預貯金に見せかけて振り込んでいる可能性があるためです。相続や退職時に大量のお金を受け取る際は、出所を確認できるような書類を用意しておきましょう。
自己資金として認められないお金
一方、以下のようなお金は自己資金として認められません。
- ほかの金融機関から借り入れたお金
- 親族や知人から借りたお金
- 手元に保管しているお金
金融機関や家族などから借りたお金は、たとえ手元にあったとしても、本人が所有するお金ではありません。
また、タンス貯金や金庫で保管しているお金など、口座でなく手元に保管しているお金についても、金融機関が出所を確認できるお金ではありません。そのため、自己資金とは認められないと理解しておきましょう。
融資を受ける際の自己資金の目安は創業資金の3割
それでは、融資を受ける際はどのくらいの自己資金を用意するべきなのでしょうか。
利用する融資制度によって条件は異なりますが、創業資金の3割が目安とされています。たとえば、創業資金として3,000万円必要な場合は、自己資金として900万円を用意しておくとよいでしょう。
自己資金なしで銀行から融資は受けられる?
自己資金なしで金融機関から融資を受けることも、不可能ではありません。
なかには、所定の条件を満たせば自己資金要件が求められない融資制度も存在します。
たとえば、起業時に利用できる日本政策金融公庫の新創業融資制度では、10分の1以上の自己資金が必要です。しかし、現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める場合や、産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める場合などは、一定の要件を満たせば自己資金要件は問われないとされています。
自己資金なしで受けられる融資制度については、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。
自己資金なしで融資を受けるデメリット
自己資金なしで融資を受ける際は、その分融資額が低く設定されている、または金利が高く設定されている可能性があるのがデメリットです。
希望する額を調達できなかったり、金利の分返済額が増えて資金繰りを圧迫してしまう恐れがあります。
自己資金なしで利用できるからと飛びつくのではなく、調達できる合計額と返済までのスケジュールを確認し、問題なく利用できる制度を選ぶことが大切です。
自己資金が少ない状態で融資を利用する際のポイント
自己資金が少なく、融資に通るか不安を抱えている方もいるでしょう。
自己資金が少ない場合でも、ビジネスが成功する見込みがあることを証明できれば、融資を受けられる可能性があります。また、いくら自己資金が多いからといって、ビジネスに具体性や可能性がないと判断されれば、融資を受けられないかもしれません。
ここでは、自己資金が少ない状態で融資を利用する際、特に意識したい2つのポイントを紹介します。
事業計画書を作り込む
まずは、事業計画書を細かく具体的に作り込みましょう。
事業計画書とは、事業内容や経営戦略、収益の見込みなどを記載する書類です。融資を受ける際は、事業計画書の提出が必要です。
事業計画書の内容が具体的であり、今後の展望や収益の見込みに明確な根拠がある場合は、支払い能力があるとみなされ、融資を受けられる可能性が高まります。
融資を受けるためにも、自身のビジネスプランを整理するためにも、事業計画書の作成が重要です。
売上や契約をアピールする
融資を受ける際にすでに売上がある、あるいは契約が決まっている場合は、その旨をアピールしましょう。事業計画書における収益の見込みに説得力があるとみなされ、融資を受けられる可能性が高まります。
特に、個人事業主として創業した後、法人を設立してビジネスを本格化させるという場合は、売上実績やすでに決まっている契約をアピールしやすいでしょう。
融資を受ける際に売上や契約がまだない場合でも、以前の取引先や顧客から受注が見込まれる場合は、その旨を事業計画書に記載しておくことをおすすめします。
融資を受ける際の自己資金に関する注意点
最後に、融資を受ける際に自己資金について注意が必要なポイントを解説します。
創業資金には運転資金も含める
創業に必要な資金を計算する際は、設備資金だけではなく運転資金も含めましょう。
運転資金とは、事業を続けるために必要な資金のことです。お店や事務所の賃料、水道光熱費、人件費などは運転資金に該当します。
創業時は多くの場合赤字であり、事業が軌道に乗るまで時間がかかる可能性もあります。そのため、あらかじめ数ヶ月分の運転資金を確保しておくことが必要です。収益見込みにもよりますが、基本的には3か月分程度の運転資金を用意しておきましょう。
先払いした領収書は保管しておく
融資を受ける前に創業に必要な費用を先払いしている場合は、必ず領収書を保管しておきましょう。「みなし自己資金」と認められるためです。
ただし、事業計画書に記載がないものを購入した場合は、自己資金としては認められないため注意しましょう。
見せ金は不正に該当する
融資を受ける際、借入金を自分が保有する資金であるかのように偽るのは不正に該当します。これを見せ金と呼びます。たとえば、家族から借りたお金を自分の口座に入れて預貯金が多いように見せかけることは、見せ金に当たります。
見せ金は虚偽の申告であるため、絶対にやってはいけません。融資の審査に通らないだけではなく、将来的にどの融資を受けることも難しくなってしまいます。
自己資金として提示したものが見せ金ではないかどうかは、厳しくチェックされます。不正に該当するため、絶対にやめましょう。
まとめ
金融機関から融資を受ける際は、創業資金の3割を目安に十分な自己資金を用意しておきましょう。自己資金とは、金融機関が出所を確認できるものであり、借入金は自己資金とは認められません。
十分な自己資金があれば、返済能力や計画性があると判断され、融資を受けられる可能性が高まります。どうしても自己資金を用意するのが難しい場合は、自己資金なし、あるいは自己資金要件が緩い融資制度を利用するのも1つの選択肢です。また、事業計画書を細かく作り込む、売上の根拠を示すなどして、事業が成長する見込みがあることをアピールすることも大切です。
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