ホテル経営には所有直営方式、リース式など様々な種類があります。経営をはじめるにあたり、自分にはどの様式があっているかを見極めることは非常に重要です。
またその他にもホテル業界の現状や今後、実際の収益や必要な許可、資格など、知らなければならないことはたくさんあります。
本記事では、ホテル経営に必要な基礎知識と共に、成功するためのポイントや実際に成功したホテルのビジネスモデルを紹介します。
Contents
ホテル業界の現状と今後
ホテル業界は社会と経済の変化の影響を強く受ける業界で、需要の動向は時代背景に伴って大きく変容するのが特徴です。現状と今後について、トピックごとに確認しましょう。
- コロナ禍以降のホテル業界
- 増えるインバウンド需要
コロナ禍以降のホテル業界
コロナ禍において、ホテル業界は急速な変化を余儀なくされ、新しい営業戦略や運営方法の導入が必要となりました。
特に、観光需要の劇的な減少とともに感染症対策への注力が不可欠となり、従来の業務形態では対応しきれない状況が発生しました。
このため、非接触型のチェックイン/チェックアウトの導入や共用スペースの消毒作業の徹底など、新しい基準に基づく運営が求められるようになりました。
増えるインバウンド需要
2024年現在、コロナ禍の混乱は落ち着き、観光需要は元の水準に戻りつつあります。
特に海外からの観光客、いわゆるインバウンド需要の増加により、ホテル業界には新たなビジネスチャンスが生まれています。
これは、世界的な観光規制の緩和および地域経済の復興を目指した施策が進行中であることに起因します。
外国人旅行者の日本国内訪問への関心が高まり、さらなる増加が予想されています。
具体的には、東京や京都などの主要都市を中心に、外国人観光客が戻りつつあり、ホテル宿泊予約の増加が確認されています。
日本政府観光局(JNTO)によると、訪日外国人の数は2024年10月時点で331万人となっており、1~10月の累計ではコロナ禍以前の2019年比で12.2%増となっており、インバウンド需要の高まりがわかります。
ホテル経営は儲かるのか?
コロナ禍が終わり、インバウンド需要が高まる今、宿泊業界の必要性は以前より増しているといえるでしょう。
しかしそもそも、ホテル経営は儲かるものなのでしょうか?
ホテル経営者の平均年収は、公的なデータとして明かされていません。
しかしホテル経営者が不動産を所有している、という観点からやや広義に考えた際、ホテル経営者などの不動産所得者の平均所得額について記載されている資料が参考になります。
「令和3年分 申告所得税標本調査」によると、令和3年の不動産所得者の平均所得額は約543万円です。令和2年が約540万円、令和元年が約521万円であることから、不動産所得者の平均所得額は年々高くなっていることがわかります。
このことから、インバウンド需要が高まる今こそ、正しい戦略でホテルを経営することで、ホテル経営で儲けることができる、といえるのではないでしょうか。
参考:標本調査結果|国税庁、「令和3年分申告所得税標本調査」
ホテルの収益構造とは
ホテルの収益源となる部門は、主に3つに分けられます。
宿泊、飲食、宴会・イベントです。
ホテルの収益構造を理解し、効率的に収益を最大化しましょう。
- 宿泊
- 飲食
- 宴会・イベント
宿泊
ホテル経営において、宿泊部門は最も重要な収益源と言えます。
宿泊施設を運営するうえでのカギは、顧客満足度を向上させることと稼働率を最大化することにあります。部屋の清掃やアメニティの充実、温かみのある接客対応など、顧客に快適な滞在を提供するための施策を徹底する必要があります。
例えば、稼働率の向上には、季節やイベントに応じた価格設定が効果的です。
適切にマーケティング戦略を実施することで、通常では低稼働率となる閑散期に収益を得られる場合があります。
さらに、インターネット予約サイトやオンライン旅行代理店(OTA)を利用し、多くのターゲット層に届ける取り組みも欠かせません。
また、宿泊部門では収益を上げるために客単価の向上も重要です。
オプションサービスの提供や部屋のアップグレードなどで追加の収益化を図ることが可能です。このような施策を効果的に組み合わせることで、宿泊部門の利益率を最大化させることができます。
収益性を最適化させるためには、競合と比較した際の価格の競争力や自社の魅力を明確に理解し、顧客にとって選ばれる宿泊施設となる必要があります。
これにより、顧客のニーズに応えるサービスと魅力的な価格設定が実現できます。
飲食
飲食部門では宿泊客や外部からの利用者に向けて、多様で魅力的な飲食体験を提供することで、ホテル全体の価値を高めることができます。
例えば、地元の新鮮な食材を使用した特別メニューや、季節ごとのイベントメニューを企画することが成功の鍵となります。
これによりリピーターを増やし、宿泊体験を充実させるだけでなく、宿泊利用がない時期でも地元の客層を取り込むことによって、収益を多角化することが可能です。
また、ホテルの飲食部門の成功はそのブランドイメージの向上につながり、新たな顧客層の獲得や再訪を促進する効果も期待できます。
宴会・イベント
宴会やイベントはホテルの付加価値を向上させる重要な要素です。
宴会場や会議室は固定費がかかるため、その稼働率を高めることで安定した収益を得ることが期待されます。
また、宴会やイベントを利用する参加者へホテルのサービスや施設の魅力をアピールできる場ともなり、リピーターの獲得や新たな宿泊需要にもつなげられます。
結婚式、企業イベント、パーティーなど多岐にわたる用途に対応することにより、多様化する顧客ニーズに対応できることがポイントです。
需要に合った柔軟な施設運営や効果的なプロモーションを実施することで、宴会・イベントの利用率を最大化し、ホテル全体の収益性向上を図ることが可能です。
ホテル経営に必要な資格や許可
ホテル経営を始めるにあたっては、取得する必要がある許可や、経営者が保有または有資格者をホテルに配置する必要がある資格があります。
ここではそれらについて、順番に説明します。
- ホテル経営に必要な許可
- ホテル経営に必要な資格
ホテル経営に必要な許可
まず忘れてはならないのが、ホテルの営業許可です。
客室が洋式中心で10室以上、1室の床面積が9平方メートル以上の場合、旅館業法に基づく「営業許可」を受ける必要があります。
無許可で営業すると6ヵ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となるので注意しましょう。
またルームサービスなどホテル内で飲食物を提供する場合、飲食店業許可が必要です。
営業許可と飲食店業許可は保健所が管轄しています。保健所へ相談し営業許可の申請を行うと、保健所による施設検査が行われます。これをクリアすると、営業許可書が交付される仕組みです。
問題がなければ申請後2、3週間で交付されます。検査基準は保健所によって多少異なる場合があるので、あらかじめ確認しておきましょう。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
ホテル経営に必要な資格
ホテル経営では様々な設備、サービスを運用するために必要な資格があります。
まず消防設備士です。
ホテルに設置された消火器、スプリンクラー、火災報知器や避難はしごといった消防設備の管理、点検に必要な資格です。
またホテルは「特定防火対象物」であるため、収容人員が30人を超える場合は防火管理者の選任が義務付けられています。
防火管理者とは、消防計画を策定して、消防訓練、設備の点検(自主点検)をします。防火管理に責任を負う立場であるため、ホテルのオーナーなど権限がある人が適任とされます。
浴場やサウナなどがあり、ボイラーが設置されている場合は、点検や調整などを実施する人材としてボイラー技師(二級)の資格者が必要です。
ボイラーの取り扱いは危険が伴うため、取り扱いは有資格者のみとされているからです。
さらにルームサービスなどホテル内で飲食を提供する場合は、食品衛生責任者の配置が必要です。
アルバイトやパートなどで運営する場合は、食品衛生責任者の資格を持った社員を配置すると良いでしょう。
ホテルの4つの経営形態
ホテル経営というと、自身で土地を購入してホテル用の建物を建て、ゼロから経営をスタートするというイメージを持っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、ホテルには4つの経営形態があり、中には開業のハードルが低い形態も存在します。
- 所有直営方式
- 管理運営受託方式(マネジメント・コントラクト方式)
- リース方式
- フランチャイズ方式
比較的始めやすい形態もあるため、自身が経営したいホテルの理想像やかけられる初期費用などを考慮して、ニーズにあった経営形態を選びましょう。
ホテルの経営形態については、以下でも解説しています。併せて参考にしてください。
所有直営方式
所有直営方式とは、ホテルの運営母体の会社が土地と建物(ホテル)所有する運営方式のことです。ホテル経営のスタンダードな形態といえます。帝国ホテルやプリンスホテルといった、国内の有名ホテルも、所有経営方式を採用しています。
所有直営方式のメリットは以下のとおりです。
- 運営側が不動産を所有しているため、融資の際に金融機関からの評価されやすい
- 利害が対立する関係者がいないため、柔軟かつ自由度の高い経営が可能
資金的に体力のある大企業が母体になることが多いですが中には個人が所有する建物を利用して、ペンションや民宿などを運営しているケースもあります。
トレンドや顧客ニーズに合わせて、独自で増改築が可能であり、機動力を持った戦略が立てられるのが魅力です。
管理運営受託方式
管理運営受託方式(マネジメント・コントラクト方式)は、建物と土地を所有する法人が、ホテル運営を代理企業に委託する方式のことです。
所有直営方式と異なり、建物と土地の所有者と、実際のホテル運営者が異なります。委託を受けた企業は、支配人やスタッフを派遣し、マネジメントを行う仕組みです。
実際に管理運営受託方式に取り組んでいるホテルとしては「星野リゾート」「ホテルJALシティ」などがあり、国内トップホテルでも採用されているのが特徴です。
管理運営受託方式のメリットは以下のとおりです。
- 運営業務に特化しやすい
- 運営業務をプロに依頼できる
- 保有する不動産をホテルとして活用したい方に適している
リース方式
リース方式とは、オーナーが土地と建物を貸し出し、運営会社が借りた建物と土地を用いてホテル経営を行う方式です。運営側は、オーナー側に利益の一部を支払うのが一般的です。たとえば、国内で人気を誇るビジネスホテル「東横イン」は、リース方式を採用しています。
リース方式のメリットは以下のとおりです。
- 運営時に不動産を購入したり新設したりする必要がない
- 不動産を準備する資金がなくても、ホテル経営を始めやすい
フランチャイズ方式
フランチャイズ方式とは、知識やブランド力などを持つ運営会社(本部)が、オーナーにノウハウやブランド力を提供し、オーナーがホテル運営を行う方式です。
フランチャイズ方式は、ホテルだけでなく、飲食店やコンビニエンスストアなどでも広く採用されています。
オーナーは本部のサポートを受けながら開業し、本部のロゴやブランド名を用いてホテルを運営します。運営やスタッフ教育のマニュアルも完備されていることがほとんどで、ホテル経営ノウハウがなくても、ホテル経営に挑戦できるでしょう。
オーナーは、ノウハウやブランド力などの対価として、利益の一部をロイヤリティとして本部に支払うケースが一般的です。
フランチャイズ方式のメリットは以下のとおりです。
- ブランド力を活かせるため、開業初期から軌道に乗せやすい
- 手厚いサポートで、ホテル開業初心者にも挑戦しやすい
ホテル経営のビジネスモデル
ホテル業界は多様な経営モデルを採用しており、それぞれに独自の特徴とメリットがあります。どのモデルを選択するかによって、経営の方向性や成功の鍵が変わってきます。
この記事では、ホテル経営のビジネスモデルについて詳しく解説します。代表的な例として、国内外で成功を収めているホテルチェーンを取り上げ、それぞれのモデルの特色や共通点を掘り下げていきます。
- アパホテル
- 星野リゾート
アパホテル
アパホテルは、日本国内で非常に知られているホテルチェーンとして高い注目を集めています。
その成功の理由の一つは、効率的な経営戦略とコスト管理にあります。同社は常に顧客ニーズを中心に置き、低コストで快適な宿泊体験を提供することを目標にしています。
これにより、ビジネス客だけでなく観光客にも支持され、リピーターが多いのが特徴です。
具体的な例として、アパホテルは地方都市やビジネス街など需要の高いエリアに集中して施設を展開しています。
また、セルフチェックインなどの最新技術を活用することで、運営コストの削減と顧客対応の迅速化を実現しています。
星野リゾート
星野リゾートは、日本を代表する宿泊施設ブランドであり、独自のビジネスモデルと経営戦略で注目を集める企業です。
この成功の背景には、ターゲット層を明確に設定し、ニーズに応じたサービスや施設の提供があることが挙げられます。
顧客の期待を超える体験型の宿泊サービスを重視し、地域の特性を活かしたリゾート運営を行っています。
たとえば、伝統的な和の要素とモダンな利便性を融合させた宿泊施設や、地域観光を推進するアクティビティを導入している点がその特徴です。
これにより旅行者からの高い評価を獲得し、リピーターの確保にも成功しています。
また、業務効率化にも注力しており、適切な人材配置と最新技術の活用により、サービスの質を維持しながら経営効率を高めています。
ホテルの経営を始めるうえで必要な準備
ホテル経営を始めるにあたって、以下の準備が必要です。
- 事業計画を立てる
- 開業資金を確保する
- 旅館業の営業許可を取得する
1.事業計画を立てる
ホテル経営に限らず、事業を興す際に必要なのが事業計画の策定です。事業計画では、どのようなサービスを提供するか、競合との差別化はどうするか、価格帯はどのくらいにするかなどを明らかにし、利益予測や資金繰りといった財務面の見通しも立てます。
事業計画は、今後の見通しを立てるために必要です。さらに、金融機関から融資を受けたり、補助金や助成金の審査の際に必要になったりする場合もあります。さらに、今後経営判断を下す際や、事業開始後の進捗管理にも活用できるため、必ず作成しましょう。
2.開業資金を確保する
ホテルの開業にあたって、開業資金が必要です。事業計画をもとに、必要な開業資金を見積もりましょう。
開業資金は、開業するホテルの経営形態や事業内容、規模などによって大きく異なります。建設・リフォーム費用や人件費、広告宣伝費などを合わせて、約1,500〜3,000万円が目安です。立地や規模によっては、数億円以上必要になることもあります。
開業資金を全額自己資金から賄えない場合は、外部から資金調達する必要があります。金融機関から融資を受けるのが一般的です。
資金調達の際は、補助金や助成金を使える可能性があります。ホテル開業で使える補助金について、詳しくは以下をご覧ください。
3.旅館業の営業許可を取得する
先に述べたように、ホテルの経営には取得する必要のある許可や、資格があります。
最も重要なのは旅館業の営業許可を取得することで、この許可書を取得しなければホテルを営業することができません。
開業資金が確保できたら、資格の取得や有資格者の採用、スタッフの採用、備品の調達などと併せてまず最初にホテルの営業許可申請を行いましょう。
ホテル経営に成功するためのポイント
ホテル経営に成功するためには、以下の2つのポイントを重視しましょう。
- ターゲットを明確化する
- 業務効率化を重視する
ターゲットを明確化する
ホテル経営を行う際は、ターゲットを明確化しましょう。ターゲットによって、適切な立地や設備、サービス内容や価格設定などが大きく異なります。
たとえば、ビジネス利用をターゲットにする場合は、駅前にホテルを構えることが大切です。宿泊費用を高額にしてしまうと、会社が定める経費の上限をオーバーしてしまい、利用してもらえない可能性があります。付近のビジネスホテルの相場を参考に、適切な価格を設定する必要があります。ゲットによって、適切な立地や設備、サービス内容や価格設定などが大きく異なります。
周囲のビジネスホテルと差別化するために、女性専用の部屋を設けてアメニティを充実させたり、マッサージチェアを設置したりするのも効果的です。ターゲットによって、適切な立地や設備、サービス内容や価格設定などが大きく異なります。
このように、まずはターゲットを明確化して、具体的なビジネスプランを考えていくことで、ターゲットのニーズにあったホテル設計を実現できます。
業務効率化を重視する
利益率を上げるためには、業務効率化が重要です。特に、人件費の削減に注力するのが有効です。
たとえば、フロント業務をセルフチェックインシステムを使って自動化することで、フロントにスタッフを常駐させる必要がなくなります。最近では、インバウンドに対応できるよう、外国語が堪能なスタッフを配置するホテルも増えています。多言語対応のセルフチェックインシステムを導入したり、翻訳システムを導入したりすれば、人件費をなるべく抑えて利益率向上が期待できるでしょう。
ほかにも、予約管理やバックオフィス業務全般を一元管理できるシステムも存在します。システムをうまく活用して、業務効率化を達成しましょう。
ホテルの経営効率化に役立つ便利なシステムについては、以下で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。
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