2021年を迎え新型コロナウイルスに対するワクチン接種が各国で積極的に進められています。
日本国内ではまだ接種は始まっていませんが、海外諸国はどうなっているのでしょうか?
また、ワクチンの効果や有効性はどうなのでしょうか?
最新のデータと共にワクチンの効果や現状を紹介していきます。
ワクチンとは?
まずワクチンとは何か、理解していますか?
人の体では感染症にかかると、抗体などが作られ、新たに外から侵入する病原体を攻撃するしくみができます。この体の仕組みを「免疫」といいます。
この免疫の仕組みを利用したのが「ワクチン」です。ワクチンを接種することにより、あらかじめウイルスや細菌(病原体)に対する免疫(抵抗力)を作り出し、病気になりにくくする仕組みです。
弱い病原体を体に入れているので、まれに熱や発しんなどの副反応がみられますが、実際に感染症にかかるよりも症状が軽いことや、まわりの人にうつすことがない、という利点があります。
新型コロナウイルスにもワクチンは有効だと考えられていて、製作と治験が進められています。
ワクチンにはDNA・mRNA、ウイルスベクター、不活化など様々なタイプがあり、遺伝情報を記録するDNA・mRNAや、コロナウイルスの遺伝情報を組み込んだ別のウイルスを使うウイルスベクターなどが新しいタイプで、病原性をなくした不活化や、ウイルスの一部を使うたんぱく質ベースのものが既存手法です。
世界のワクチン開発状況
新型コロナワクチンの接種は2020年12月上旬の英国を皮切りに、世界各国で接種が本格化し始めました。
世界58カ国・地域で始まっていて、海外領土などを含めると、66カ国・地域に達します。
米国のファイザーと独国のビオンテックのmRNAワクチンは、昨年12月に英国、米国、欧州などで承認(緊急使用許可や条件付き承認を含む)され、これまでに40カ国以上で承認を得ています。
米国のモデルナのワクチンも昨年12月に米国で緊急使用が認められ、今年1月には欧州でも承認を取得しました。
英国のアストラゼネカのワクチンは、英国やインドなどで承認を取得していて、欧州でも1月中に承認される可能性があります。
ロシアは昨年8月、国立ガマレヤ研究所が開発したウイルスベクターワクチン「スプートニクV」を承認しました。
中国は昨年12月末、シノファームの不活化ワクチンを承認し、同じく中国のシノバックのワクチンはチリやインドネシアで緊急使用が認められています。
インド政府も今年1月、バラート・バイオテクが開発した国産の不活化ワクチンを承認しました。
日本では、昨年12月18日にファイザーが特例承認を求めて申請し、政府は2月下旬までに接種を始めたい考えで、承認審査と並行して接種体制の準備を進めています。
ファイザー/ビオンテックとモデルナのワクチンは、いずれも数万人規模で行われた臨床試験で95%前後の予防効果を示しています。
英アストラゼネカと同オックスフォード大が共同開発しているウイルスベクターワクチンも、2レジメンの平均で70%の有効性が確認されたとするP3試験の中間解析結果が発表されています。
米国のジョンソン・エンド・ジョンソンのウイルスベクターワクチン「JNJ-78436735」や、米ノババックスの組換えタンパクワクチン「NVX-CoV2373」などもP3試験を実施中です。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは1月中にも最終試験の結果を公表する見込みで、1回接種の同社ワクチンが有効となれば、接種拡大の追い風になると期待されています。
各国の接種回数を色の濃淡で示すと、欧州各国で接種が比較的進んでいる様子がわかりますが、アフリカやアジアは接種の始まっていない国が大半です。
一部の先進国が巨費を投じてワクチンの確保を進める一方、経済力に劣る発展途上国での接種が遅れているのが現状で、ワクチンも各国の経済格差に影響される一面があるようです。
また、中国がフィリピンやブラジル、トルコなどにワクチンを供給する意向を示すなど「ワクチン外交」を仕掛ける動きも出てきています。
世界の接種状況
世界全体の累計接種回数は1月27日までに8166万回を超えました。
なかでも、米国・中国の接種回数が突出し、2カ国で全体の58.1%を占めています。
欧州各国でも普及が進んでいますが、人口あたりの接種回数ではイスラエルが目立っていて、単純計算では3人に1人以上が接種を終えたことになります。
ほかにも、中東産油国のバーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)でも人口あたりの接種回数は高くなっています。
理由としては、外国人労働者への依存度が高く、政府が対応を急いでいるためだと考えらます。
日本は2月下旬から医療従事者を対象に接種を開始する予定で、河野太郎氏をワクチン担当にしました。
ワクチンは経済正常化の切り札とされ、普及度合いが各国の株価や資産価格に影響する可能性が大いに考えられます。
また、ワクチン接種回数が多いアメリカですが、感染者数や死者数はいまだ世界で一番多いためワクチンの効果に即効性がないことも改めて考えられます。
ワクチンの契約状況と供給体制
現在、各国政府はワクチンメーカーとの供給契約の締結を急いでいます。
1月22日時点で71.8億回分を超えるワクチンの契約が締結されており、そのうちの20.6億回分が英国のアストラゼネガが最大のシェアを持ち、少なくとも31ヶ国・地域と契約をしています。
最も多くのワクチンを契約しているのはEU(欧州連合)で、人口比に応じて加盟国に配分しています。
WHO主導で2020年に立ち上げた共同購入の枠組み「コバックス」も複数メーカーと契約済みです。
コバックスとは、政府や製薬会社と協力し、世界中のあらゆる経済力の国が新型コロナのワクチンを入手できるようにする唯一の国際的取り組みの事です。
コバックスには日本や中国など170カ国以上が加盟し、経済力に左右されない公平な供給体制で「ワクチン格差」の是正を目指していますが、米国、ロシアは加盟を見送っています。
また、契約が済んでいても、生産能力には限りがあるため実際の接種には時間がかかってしまう問題もあります。
ほかの問題として、適切に運搬できるかなど輸送面でも問題が生じています。例えば、米ファイザーのワクチンは摂氏マイナス70度で保管する特殊な物流体制を整える必要があるため運搬が非常に困難です。
現状、ワクチン争奪戦を有利に進めているのは先進国で、EUは15.8億回分のワクチンを契約済み、米国は1カ国で12.1億回分ものワクチンを押さえています。日本も3.1億回分を確保しているようです。
ワクチンによっては免疫獲得に2回の接種が必要で、接種可能人数は各国の契約数よりも少なくなると考えられています。そのため、メーカー各社は増産を急ピッチで進め、世界全体の生産能力は2021年中には190億本まで急増する計画です。
ワクチンの有効性と危険性
米国で開発されたファイザー社とモデルナ社の新型コロナのワクチンの能力は非常に高いようです。
昨年11月末に臨床試験の最終報告での発症抑制率(ウイルスを浴びても発症しなくなるリスクの比率)が、94~95%ととても高いです。
これらのワクチンは2回打たないと試験通りの効果はないとされていますが、接種を進めているイスラエルでは1回目の接種をした人からすでに30%以上の感染率が下がり始めていると報告されており、ワクチンとしてかなり有効性が高いといえます。
また、ワクチンと聞いて考えるのは副反応などの安全性の懸念です。
医師がYouTubeで公開されている臨床試験の治験の最終報告やFDA承認の審査の様子を見ても、ファイザーもモデルナのワクチンはとてもよくできていると判断できるそうです。
現状、新型コロナウイルスのワクチンはこれまでのワクチンと比べても『安全性が高い』と言い切ってもよく、現在世界で1200万人以上が打っていていますが、命に関わるような副反応や後遺症が残るケースは少ないようです。
実際に米国で接種した日本人医師は以下のコメントを残しています。
「接種したワクチンの効果がどれくらい続くかはまだわかりませんが、臨床試験の追跡結果を見ている限りでは、接種から3~4か月経っても効果の指標である抗体価がまったく下がっていません。通常、ワクチンの効果は急激には下がらず、ゆるやかに減っていくことが多いので、少なくとも半年、1年は効果が消えることはなさそうです。かなりコストパフォーマンスも良いですし、これは絶対に打つべきだなと思っています」
感染症の流行を抑えて終息させるためには、「集団免疫」が重要だとされています。
具体的には、国民の6割以上がワクチンを接種し、自然感染後の回復者を含む免疫保持者が多くなれば、感染は終息に向かうと考えられています。
そのため、如何に早く国民の6~7割にワクチンを接種させられるかが課題となっています。
まとめ
日本ではワクチンの接種は始まっていませんが、海外各国では急ピッチで進められています。
新型コロナウイルスのワクチンは有効性が高く、感染拡大防止に有効な手段とされています。
しかし、経済格差や運搬、生産など抱える問題は多く、各国に十分な量のワクチンが流通するにはまだまだ時間がかかりそうです。
日本でも接種が始まった際には、率先して受けるべきだと考えられます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考記事
新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】
チャートで見るコロナワクチン世界の接種状況は