コラム, ホテル経営

【事例から学ぶホテル経営の成功要因】ザ・リッツ・カールトンの事例を解説

コラムホテル経営

ホテル経営に成功するための要因を学ぶためには、ケーススタディが重要です。今回は、ラグジュアリーホテルとして名高いザ・リッツ・カールトンの事例を取り上げます。ザ・リッツ・カールトンの特徴的な施策や経営のポイントを解説しているため、ホテルを経営している方はぜひ参考にしてください。

ザ・リッツ・カールトンの概要


ザ・リッツ・カールトンは、ラグジュアリーホテルとして世界的に名高い、高級ホテルです。

2023年8月時点で、日本国内には7軒存在します。世界中に展開しており、充実した客室・設備とゲストへの質の高いサービスで、数々の賞を受賞しており、5つ星にも認定されています。「世界一のホテル」とも称されており、その経営戦略やマーケティング手法には、ホテルをはじめとする多くの企業が注目しています。

ザ・リッツ・カールトンの歴史

ザ・リッツ・カールトンは、ヨーロッパの有名ホテルでホテリエとして働いていたセザール・リッツが、1898年にパリでオープンした「ホテル リッツ」がはじまりです。セザール・リッツは、自らの経験を活かし、理想のホテルとしてホテル リッツを開業しました。結果、多くの王族や有名人から愛されるホテルへと成長したのです。

1899年には、イギリスで「カールトン ホテル」をオープンし、同様に成功をおさめます。

その後、アメリカにもホテルを開業したいと考えたセザール・リッツは、1905年に「ザ・リッツ・カールトン」という会社を立ち上げ、ホテルを複数オープンさせます。しかし、経営はふるいませんでした。セザール・リッツの死や第二次世界大戦の影響を受け、衰退へと追い込まれます。

ホテルを再建させたのは、アトランタで不動産業を営んでいたW・B・ジョンソンでした。使用権を獲得した彼は、経営を立て直します。やがて、世界的に有名なホテルグループへと成長しました。1997年には、大阪で日本初のザ・リッツ・カールトンが誕生します。

1994年には、アメリカのホテルチェーン「マリオット インターナショナル」の傘下に入りました。マリオットの豊富な資金を活かし、ますます拡大しました。

ザ・リッツ・カールトンの経営のポイント


ここでは、ザ・リッツ・カールトンの経営を理解できるよう、4つのポイントを解説します。

  • 企業理念「ゴールド・スタンダード」の設定
  • 顧客満足を追求するための「ロビーライオン」
  • 従業員第一主義の徹底
  • 各従業員が持つ、1日2000ドルの決裁権

企業理念「ゴールド・スタンダード」の設定

ザ・リッツ・カールトンは、企業理念を「ゴールド・スタンダード」として掲げています。そして、会社の信条や行動指針であるクレドや、守るべきモットーをまとめているのがポイントです。

クレドでは、ゲストへの心のこもったおもてなしと快適さの提供を、最も重視する使命と心得ている、という旨が掲げられています。そして、「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」をモットーに、質の高いサービスを提供しているのです。

さらに、ゴールド・スタンダードを浸透させているのもポイントです。クレドやモットーを理解し、自然にゴールド・スタンダードに従った行動ができるよう、従業員がクレドやモットーを何回も唱えている、と言います。加えて、朝礼では「ラインナップ」という時間を設け、サービスやバリューについて、対話形式で考える機会を確保しています。

また、スタッフはそれぞれ「ゴールド・スタンダード」が印刷されたカードを持ち歩き、行動に迷った際の参考にできるようにしているのもポイントです。

顧客満足を追求するための「ロビーライオン」

ザ・リッツ・カールトンは、顧客満足を追求し、ゲストに質の高いサービスを提供しているのが特徴です。

ザ・リッツ・カールトン東京では、「ロビーライオン」という取り組みを進めています。これは、毎日一定の時間にすべての従業員が交代でロビーに立ち、顧客と直接やり取りをすることで、生の顧客情報を取り込むという取り組みです。

顧客のニーズを直接取り組むことで、顧客目線に立った質の高いサービス提供に役立てています。

従業員第一主義の徹底

ザ・リッツ・カールトンは、顧客だけでなく、従業員のことも大切に考えているのが特徴です。

「顧客第一主義」を掲げている企業は多いでしょう。しかし、ザ・リッツ・カールトンは「従業員第一主義」を掲げています。これは、顧客を感動させるためには「従業員が自身の仕事にどれだけ感動できているか」が必要であるという考えに基づいています。

従業員が自分の仕事に誇りを持てなければ、顧客への真のおもてなしは実現しないでしょう。

ザ・リッツ・カールトンは、従業員のメンタリティ醸成を第一に考え、質の高いサービス提供につなげています。

各従業員が持つ、1日2000ドルの決裁権

ザ・リッツ・カールトンは、従業員に、「1日2000ドルの決裁権」を与えていることでも有名です。

これは、1日2000ドルまでであれば、顧客に満足してもらうために自由に使ってよいという施策です。

顧客から要望があった際、「上長に確認しないと判断できない」というケースや「サービスの範囲内であるため応えられない」ということは少なくないでしょう。しかし、ザ・リッツ・カールトンでは、従業員が一人ひとり2000ドルまで利用できる権利を持っているため、臨機応変に顧客の要望に応えられるのです。従業員が自身で判断し、行動できる仕組みが、顧客満足度の向上に大きく貢献しています。

まとめ


ザ・リッツ・カールトンの経営事例からは、以下のポイントが読み取れます。

  • 企業理念や行動指針、モットーなどを全従業員に浸透させている
  • 顧客満足を徹底的に追及している
  • 質の高いサービスのために、従業員第一主義を貫いている
  • 従業員に決裁権を持たせる、大胆な取り組みを行っている

ホテル経営に成功するためには、広報に力を入れて多くの新規顧客を集めるだけでなく、リピーターを育成することも欠かせません。リピーターになってもらうためには、満足度の高い宿泊体験を提供する必要があります。「このホテルはサービスの質が高い」と多くの方から評価されれば、それがホテルのブランド力強化につながり、さらに多くの顧客を集められるようになるでしょう。

ザ・リッツ・カールトンの事例を参考に、顧客への向き合い方を見つめ直し、サービスを工夫してみてはいかがでしょうか。