コラム

「旅行に行きたい」欲求は不滅。コロナ鎮静化後の消費者動向について

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「旅行に行きたい」欲求は不滅。コロナ鎮静化後の消費者動向について

こんにちは。この記事では、新型コロナウイルス感染症の鎮静化後の宿泊・旅行業界の消費者動向をBooking.comの調査を参考にして書いていきます。
コロナ禍の現状から、宿泊施設における注意点・工夫方法も書いてありますでの、是非ご参考にしてください。

現状はどうなっているの?


ここでは、コロナ禍での現状を見ていきます。

宿泊者数の減少

2019の12月まで好調だった旅行業界でしたが、新型コロナウイルス流行の影響を大きく受けています。
「観光統計」(観光庁2020年11月30日発表)によると、延べ宿泊者数の推移、延べ宿泊者数前年同月比の推移が2020の1月から急激に下降線をたどっていることがわかります。

10月に国内のホテルや旅館などを利用した、外国人宿泊者数は10月28万人で97.3%減でした。こちらは、先月の9月、19万人97.8%減とほぼ同じ減少幅となっており、新型コロナウイルス流行前までは成長の一途をたどっていた外国人旅行客に深刻な影響が続いています。
一方で日本人宿泊者数は、5月の81.6%減で底を打ち、その後は持ち直しつつあります。10月は3,296万人で前年同月比17.2%減少し、9月の2,584万人、36.2%減だった減少幅よりは縮み、改善傾向にある様です。また、10月から政府の観光支援策「Go To トラベル」の対象に東京都が加わった事が一定の底上げ効果があったとみられています。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念され、政府は12月14日に、「Go Toトラベル」の一時中止を発表しました。これにより、改善傾向にあった宿泊者数が再び悪化する恐れもあります。

宿泊旅行統計調査 (令和2年9月・第2次速報、令和2年10月・第1次速報) 1 -延べ宿泊者数の推移

宿泊施設の減少

宿泊施設にも甚大な影響が出ています。帝国データバンクによると2020年10月のホテル・旅館の倒産(負債1千万円以上の法的整理)は15件で、2桁台を記録しました。1月からの累計は105件で、前年同期(53件)からほぼ倍増しており、10月には現時点で前年度1年間の合計である70件超えた状況となっています。

「観光経済新聞」10月のホテル・旅館倒産、4ヵ月ぶり2桁台

宿泊業界売上への影響

日本政策金融公庫が実施した調査によると、新型コロナウイルスの影響で約半数の企業が売上50%以上減となっており、特にホテル・旅館業は半数以上が売上80%減と大打撃を受けていることが浮き彫りになりました。
(調査は2020年6月中旬に生活衛生関連の企業3138社を対象に郵送で実施)
新型コロナウイルスについて、「影響があり今後も続く見込み」との回答は全体で88.7%。ホテル・旅館業は99.5%と際立っており、「収束している」との回答は0.5%に過ぎません。ホテル・旅館業の事業への影響については、「売上減少」が98.9%、「休業」が78.6%、「マスクや消毒液などの衛生用品が確保できない」も33.2%に上っています。

また、特にこのホテル・旅館業は売上の減少幅が甚大で、「80%以上減少」が過半数を超えた54.6%、「50%以上減少」が全体の約9割を占めています。また、それに伴った運転資金の補てんについて尋ねたところ、「外部からの借入などで補った」が61.5%、「自己資金で補った」が27.3%でした。。

業種別の資金調達額の調査によると『外部からの補てん金額もホテル・旅館業は「5000万円超」が38.3%と最も多く、「1000万円超2000万円以下」が17.4%、「3000万円超5000万円以下」が14.8%と多額に上っている。』との結果が出ています。

新型コロナウイルス感染症の影響で約半数の企業が“売上50%以上減、ホテル・旅館業は約9割、飲食業は約7割の企業が“売上50%以上減

旅行業界のコロナ後の消費者動向について


ここからは、大手宿泊施設オンライン予約サイト「Booking.com」の調査(対象は28か国にわたる2万人から集計)で最新の旅行業界に対する消費者調査が分かりましたので紹介させていただきます。

1.「旅行したい」という欲求は消えていない。

世界中の旅行者の半分以上(53%)が、「新型コロナウイルス感染症のワクチンおよび治療法が開発されるまで安心して旅行できない」と回答しており、以前のような自由に世界を旅行状況なるまでは時間がかかるかもしれません。
しかし、移動や渡航が制限されてこれからの先行き不透明な状況が続いて状況でも、多くの人の「旅行したい」という欲求は消えていないようです。
調査によると、

“直近の世界各国で実施されたロックダウンの最中、旅行者の65%が「再び旅行するのが楽しみである」と回答し、61%が今までよりも旅行のありがたみを感じており、「今後は当たり前だと思わずに貴重な機会として受け止めるだろう」と回答しました。また、回答者の半分以上(53%)が「もっと世界の色々な場所を旅行したい欲求が強まった」と答え、42%(Z世代は51%、ミレニアル世代は49%)が「2020年に旅行ができなかった分を今後取り戻したい」と答えている”

といった調査結果でした。このように、家で過ごす時間が増えたことにより、以前のような外の世界を楽しみたいという気持ちが高まっていることがわかりました。

2.さらなる「価値提供」の重要性

多くの旅行者は、旅行のできる機会が減ってしまったことに伴い1回1回の旅行体験を大切にするようになり、コロナウイルスの経済的影響により今後の旅行者は支払金額に対して、必然的により大きな価値を求めるようになります。
調査によると、

“旅行者の62%は「今後旅行の検索や計画を行う際に料金をより意識する」と回答しており、55%は「プロモーションや割引料金を探す可能性がより高い」と回答しています。このような傾向は、今後何年にも亘って続くと考えられます。”

とあるように、「良い価値体験をより安く、安い価格でより良い価値体験」を好む傾向が強さを増すと予想されています。

3.70%の旅行者が、業界の回復を積極的にサポートしたい。

コロナウイルスにより甚大な影響を受けた旅行業界ですが、多くの人が復活を望んでいます。調査結果には、

“70%の旅行者は業界の回復を積極的にサポートしたいと考えており、67%は今後旅関連の予約をすることにより世界各地のコミュニティの復興につながることを望んでいます”

との結果がありました。非常に嬉しく、ポジティブな結果ですが、それと同時に、旅行者が旅行業界からこれまで以上の価値が還元されることを期待することが予想されます。
今後は旅行者がお金の使い方に慎重になり、良い価値やメリットの高い選択肢、日程変更などの柔軟性やキャンセルポリシーなどの透明性、そして意味のある体験を提供し、アピールするために業界の中で協力して工夫する必要がありますね。

4.遠方の旅行よりも近場への需要増加

コロナウイルスの流行により、旅行者は手軽で安全に、そしてサステイナブルな旅行を求めてきており、近場への旅行の需要が増加してきています。
調査によると

“旅行者の47%が、「中期的(今後7~12ヶ月間)には国内で旅行する予定である」と回答し、38%は「長期的(1年以上後)にもしばらくは国内で旅行する予定である」と回答しました。国内旅行においては、43%が「自身が居住する地域または国内でまだ行ったことのない目的地を訪れるつもりだ」と答え、46%が「国内の自然を楽しめる旅行をするつもりだ」と答えています。また約半数が、「国内・海外問わず既に行ったことのある身近な場所へ行く予定だ」と回答しました”

旅行者はこのような目的地が近場であれば、移動時間やそれに対するコストも節約することができます。現地のサービスや宿泊施設は歴史的、文化的なツアーを提供したりや近場で見落としていた場所を再発見するツアーの人気が再燃したりと、地元のビジネスやコミュニティの回復をサポートしたいという想いが広がり、すぐそばにある場所の歴史や美しさを改めて誇りに感じたりすることが増えていく可能性があります。
一方で、遠方の旅行に関しては

“「2020年末までに遠方に旅行する予定だ」と回答した人は6%であったのに比べ、「2021年末までに遠方に旅行する予定だ」と回答した人は21%”

となっており、身近な場所への愛着と同時に遠方への旅行への欲求も変わらず存在することがわかっています。

5.安全第一な旅行を

政府や、旅行サービスの提供会社は旅行者の安全を確保するための基準を設ける必要があります。旅行者からの期待が高まる中、観光地や宿泊施設は信頼を取り戻せるように一層努めなければなりません。
調査によると、

“旅行者の70%は「観光地においてソーシャルディスタンスの措置を取ることを期待する」と回答しています。さらに70%は、「どのような健康・衛生に関するポリシーを実施しているかを明記していない限り、宿泊施設は予約しない」と答えており、75%は「抗菌および殺菌効果のある製品を用意している宿泊施設を好む」と答えています”

このように、日常生活の様式が一変し、ウイルス対策を強化しているように宿泊施設や観光地においても同様のウイルス対策の強化が求められています。
また、健康・安全性をより強化するために、テクノロジー利用も重要な役割を果たしています。
さらに調査によると、

“64%の旅行者が「旅行時に健康上のリスクをコントロールするためにテクノロジーが重要である」と既に答えており、63%の旅行者が、「宿泊施設は最新のテクノロジーを活用して旅行者の安全を確保することが必要だ」と答えています。”

このような結果により、テクノロジー利用の加速が予想されます。特に、感染予防に直接つながる観光地や宿泊施設での非対面・非接触、セルフサービスなどのテクノロジー利用が加速することが予測されます。
このように健康や安全対策に重きを置くことは新たな習慣として定着すると考えられており、早急な対応が求められています。
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以上の結果のように、新型コロナウイルス感染症の流行により甚大な影響を受け、依然苦しい状況は続いている宿泊・旅行業界ですが、多くの人々が業界の回復を望んでおり、コロナウイルスが鎮静化してきた暁には、復活できる兆しはまだまだあるようです。

宿泊施設での工夫


先ほどの調査から、やはり安全性が最重要であり、感染症対策を強化することが大切とわかりました。次からは、宿泊施設としてのできる工夫方法を見ていきましょう。

検温、消毒の実施

新型コロナウイルスに関しては、発症していない人からの感染もあると考えられますが、事前の検温又は現地での検温を行い、発熱の有無の確認を行うよう努めましょう。その他にも、発熱や軽度であっても咳・咽頭痛、けん怠感などの症状がある人は申し出るように呼びかけることが大切です。宿泊客から申し出があった場合は、同意を得た上で、速やかに近隣の医療機関や受診・相談センターへ連絡し、その指示に従いましょう。
手指から粘膜への感染も多いので、同時に手指の消毒も行い、感染予防を行うのも効果的です。

大浴場、食事処・レストランなどの宿泊者が同時に利用する場所での感染予防

大浴場、食事処・レストランでは多くの人が同時に利用することが考えられるため、入場制限をかけることや、時間差での利用形式、座席レイアウトの変更、パーティションの設置をするなどの工夫が必要です。また、トイレやドアノブやロッカー、椅子などは触れることが多く、定期的な消毒が必要です。宿泊者がリラックスしている状況もあり、感染予防が甘くなりがちなため感染予防対策を徹底しましょう。

従業員等の休憩スペースでの感染防止

宿泊者への感染予防に目が行きがちですが、従業員同士の感染予防にも留意しなければなりません。この、従業員等の休憩スペースでは感染リスクが比較的高いと考えられているようです。
使用者はマスクの徹底や、一度に休憩する人数の調整や、常に喚起をすること、共有ブルの定期的な消毒を行うようにしましょう

テクノロジーの利用

『宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン』には、従業員と宿泊客及び宿泊客同士の接触をできるだけ避け、対人距離(できるだ け1m以上)を確保する。感染防止のための宿泊客の整理(チェックイン・アウト時に密にならないように対応。)と言及されているように、フロント業務で感染する可能性が高まるようです。
そのようなときにはぜひ、テクノロジー利用をしていきましょう。
スマートチェックインサービス「maneKEY」では、多言語対応のサービスで、チェックインを非接触・非対面にします。宿泊者が必要事項をあらかじめ携帯で記入しておくことで、QRコードや(海外からの旅行の場合)本人確認としてパスポートの顔を自動AI認証するだけで受付が済み、感染リスクを軽減してくれます。
このような、感染予防につながるテクノロジーサービスは急速に増えています。様々なサービスの費用や効果をよく吟味し、取り入れてはいかがでしょうか。

まとめ


いかがでしたでしょうか。新型コロナウイルス感染症の流行により先行きが不透明で苦しい状況の宿泊・旅行業界ですが、多くの人々が業界の回復を望んでいるようです。
業界を再び盛り上げるためにも、今までとは異なったサービスの提供方法や、様式に対応できるように準備を行うようにしていきたいですね。
この記事が、参考になれば幸いです。ご覧になっていただきありがとうございました。